2000.11.2~12.24
恒松正敏映画「白痴」の仕事
昨年公開された手塚眞監督の映画「白痴」(原作・坂口安吾)-この映像美あふれる映画に僕は一人の画家として参加した。タイトル画を始め、劇中の人物である気違い絵師「木枯」の棲む古い屋敷の襖や屏風、箪笥や石などに絵を描くのが僕の仕事。台本を読み、手塚監督との最初の打ち合わせで基本的なラインを確認しあった上で、後は好きな様に描いてほしいとのこと。
手塚眞氏との出会いは七、八年前にさかのぼる。その当時からこの映画の話は漠然と聞いてはいたのだが、具体的な仕事の内容が決定したのはクランクインの二ケ月前。その間に個展もあり、〆切までの制作日数は約一ケ月半。描くモチーフはこれまでの自分の絵画の集大成的な物にしようと思ったが、時間の制約もあり、まず画材の面で乾きの遅いいつもの油彩・テンペラは使えず、墨とアクリル絵具で描くことにした。また、屏風絵や襖絵は以前から興味があり、いずれ自分でも描いてみたいとは思っていたが、普段、比較的小さな絵を描くことが多い僕にとっては、サイズ的に大きい、そしてその枚数も多い、さらに箪笥や石などの素材の違い、いろんな意味で、ほとんど初めてといえる体験だったが、自分ではほぼ全力を出し切ったと現在でも思っている。
この映画のクライマックスといえるラスト近くの大空襲シーン。一切が燃え上がる。当然僕の絵も燃える-と書くとえらく物騒に聞こえるが、もちろん手塚監督との合意了解の上での話だ。むろん作品全部というワケではない。そこは映画、実際に燃やしたのは視覚効果を考えて平面よりは立体モノ、つまり箪笥や飾り棚、そして顔のある石たち(本展の箪笥は再制作)。
それらの作品はみごとに燃え尽きてしまったが、その燃えゆくさまが永遠にフイルムに残り続ける。そして、またいつでもスクリーンの上で燃えてゆく自分の作品に会える。僕は大きな楽しみを手に入れた。 |